サガンで逃避

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というわけで、久しぶりにフランソワーズ・サガンを読む。


当時のおしゃれ先生でもあった友人が貸してくれたのが「熱い恋」。20代前半のそれまではサガンはなんとなくお高くとまってとっつきにくい印象だったけど、この「熱い恋」を読んで以来はまった。


「熱い恋」は、ブルジョワ階級で裕福な熟年男性シャルル(50才)に囲われている30歳の「女の子」リュシールと、同じくブルジョワ階級のマダム・ディアンヌ(42才)に囲われている30歳のインテリ青年アントワーヌの出会いと別れの物語。これだけの話である。リュシールは、本を読んだり散歩をするだけの非生産的な人生を謳歌し、一方、囲われることに引け目を感じブルジョワを軽蔑するアントワーヌでは、はなから破局は目にみえているのだが、これだけの話を読ませるところがサガンなのである。


この30歳女子を世話するおじさまシャルルは、父性と慈愛を持った考えられないくらい寛大な男だ。リュシールがシャルルのもとを去ってアントワーヌのところへ行く時のシャルルの台詞がふるってる。


....(アントワーヌは)もうすでにあなたという人を、享楽主義で、のんきで、どちらかというと卑怯なあなたを非難していますよ。アントワーヌは、あなたの弱点だとか欠点だとかを当然恨むようになるでしょう。まだあの男には女の強さとなっているものがわかっていないのですよ、男が女を愛する理由がそれなんですが。たとえそれが最悪のものを包み隠しているとしても。アントワーヌはあなたからそれを学ぶでしょう。....そしてあなたはわたしのところに帰ってきますよ。なぜなら、私がそういうあなたの欠点をみんな知っていると言うことをあなたは知っていますからね。


ザッツオール。これがすべて。当然その通りになる。


初めてこれを読んだとき、自分がまだ20代の前半だったせいもあり「30歳の若者たち」という表現に、大いに驚いた。「30歳なんてもうおばさんだし、おじさんじゃない!」と。「熱い恋」が発表されたのは、1965年だからかれこれ45年近く昔である。少なくともパリでは、すでに「アラサー」的環境が整っていたということである。さすが、斜陽の大国?


といっても、ブルジョワの「大人」が貧乏な若い男女をかこってパトロンになるというのは、階級が厳存するヨーロッパ社会ならでは、ということかもしれないけど。


ともかく、サガンの小説はどれもこれもブルジョワ階級の鬱屈を描いた作品ばかりで、この時点で「非日常」に逃避できる。冴えない気分の時に読むには最適なのだ。なんたって、シャルルだのアントワーヌだのディアンヌだのっていう名前だけでパリ気分ですわ(笑)。


それにしても、サガンの小説は読む年齢によって感想が異なるところがおもしろい。今読んだ感想としては、私にはシャルルはいなかったわね、ああ、残念、ってところですわ、ほほっ(笑)。


そして、「大人の男」は言うことはやっぱり違う。若さと無謀さが彼方に去った時、忍耐と寛容がそれを補うしかないなんて、大人ってやっぱりちょっと切ないわね。最後に「大人」が勝利する、っていうのも金持ち階級と大人社会ができ上がっているヨーロッパならではかもね。




<追>
少し前にサガンの自伝映画が公開されていたが見逃してしまったのが、久しぶりに読むきっかけになりました。この「熱い恋」の前によんだ「悲しみよこんにちは」は言わずと知れたサガン18歳のデビュー作ですが、18歳でこの眼力には恐れ入りますね。この小説の大成功でサガンは18歳にして350億円もの収入を得たということですが、それが悲劇の始まりでもあったのですから人生うまいこといかないもんです。






<猫もね>

catzElysium ~ 猫カフェの子猫


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この記事へのコメント

nori
2009年08月25日 23:21
フランソワーズ・サガン・・
はずかしながら始めて聞くお名前・・。
ってか本を読まな過ぎなんですけどねぇ
漫画ばかりだわぁぁ(ノ・ω・)ノひぃぃ~(笑
kikiさんは幅広いですねぇ~♪

2009年08月26日 07:38
noriさま>>
サガンの小説が発表されたのって随分前ですからね。わたしも、マンガも読みますよ。どっちも、現実逃避できます、できますっ(笑)。

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