ミレニアム・アマゾネス診断~ミレニアム3部作 by スティーグ・ラーソン

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というわけで、言わずと知れた世界的大ベストセラーの「ミレニアム」3部作を読んだ。


帯にさまざまな著名人や読者の絶賛の声が載せられているが、この絶賛、真実100%の大傑作である。すでに母国スゥエーデンで映画化され、さらにダニエル・グレイグ主演でアメリカ版もこの2月から公開されている。


「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」の3部作で、それぞれ上下2巻の全6巻シリーズであるが、どのシリーズのどの場面をきりとっても、寸部の隙がない。「ミレニアム」シリーズは、ピアノ・コンチェルトのような構成になっている。

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まず、第1楽章「ドラゴン・タトゥーの女」では、雑誌『ミレニアム』の発行人でもあり記者でもある陽気なカッレことミカエル・ブルムクヴィストと全身に刺青をほどこした謎めいた天才ハッカー、リスベット・サランデルが、「犬神家の一族」ばりに孤島で繰り広げられたある大富豪一族の隠された謎を解き明かていく物語。


そして、続く第2楽章では謎めいたちびっ子ハッカー・リスベットが犯人として陥れられた殺人事件を軸に、リスベットの忌まわしい過去と現在にまで及ぶ隠蔽されてきた国家的犯罪に迫る警察官たちの闘いと、リスベットが過去からの離別を図るべく繰り広げられる超ハードボイルドな孤高の闘いとその顛末を。


さらに、第2楽章が終わるとともに始まる第3楽章では、市民権を剥奪され続けたリスベットの名誉の回復と国家的大スキャンダルを暴いて行く官憲とミカエルをはじめとするメディアも絡んでの探って探られての法廷闘争がスリリングに繰り広げられて行く。

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大軸となる物語のほかにも、小さな嵐をあちこちに散りばめてはおさめ、それがまたメインストリームにもどってくるなど、複合的に練られたプロットもみごとである。


サイコスリラー、警察小説、スパイ小説、法廷小説、ノワール小説、などなど「解説」にもあったが、こういった要素に、ハッカーたちの世界や出版業界の裏側、といったものも絡ませて、スティーグ・ラーソンの筆力たるや素晴らしい、の一言である。


そして、そういった推理小説としてのおもしろさはもちろんだが、登場人物たちのキャラクター設定が大きな魅力でもある。リスベットが独自の信念で正と負の両極にふれる振り子だとすると、ミカエルをはじめとする正のパワーとザラチェンコらの負のパワーしかもたない極め付きの悪役との対比がまた、物語をおもしろくしている。一遍の慈悲も抱かせないまさしく悪の権化、人間の皮をかぶった悪魔と呼ぶにふさわしいほどの負のパワーがあってこその正という意味では、悪役のおぞましさや嫌らしさは天下一品の設定である。

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主人公ミカエルは、正義感あふれた真摯な編集者だが、めっぽう女に弱くモテモテで女性を欠かしたことがない。一方、リスベットは身長150cmの(「ドラゴン・タトゥーの女」では154cmだったが、「火と戯れる女」以降では150cmにさらにちびっ子になっている)貧乳ガリガリ娘にもかかわらず、知能的にも精神的にも肉体的にも誰にも負けない超、超スーパーウーマンである。(途中でリスベットは豊胸手術を受けるのだが、数少ない笑えるエピソードになっている。)


リスベットは、その悲惨な過去の出来事もあって極度の人間嫌いと人間不信の状態にあり、ほとんどの人々の感情を逆撫でするような全くかわいげのない娘なのだが、必ずや彼女の知性と独自の道徳感や信念を理解する地位も名誉も確立したノーマルな人々が現れ、同時に彼らによって護られてもいる存在なのである。リスベットは父親を殺したいほど憎んでいるのだが、彼女を護る人々は彼らの父性に訴えてくる存在として彼女を擁護するあたり、興味深い。


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だから、リスベットがどんなに窮地に陥っても、必ずやそういった味方が現れてくれるところも、読んでいて陰鬱なだけの気分にならずにすむのある。もちろん、リスベットの超人的な活躍にもすかっとするのであるが。


陽と陰、ノーマルとアブノーマル、真と嘘、裏と表、合法と非合法。リスベットは常に陰に佇むダークヒロインなのだが、そこに表舞台で活躍する超陽性のミカエルが絡んでくることで、見事にバランスがとられる。また、男性vs女性の対比で見るなら、リスベットをはじめとする素晴らしきスーパーウーマンたちが、スリリングな場面で必ず大活躍してくれるのである。男性が静的で女性が圧倒的に動的である。

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「眠れる女と狂卓の騎士」でも触れられていたが、まさしくアマゾネス軍団なのである。

No. 1 リスベット・サランデル。26歳。身長150cm、体重40キロ。天才ハッカー。映像記憶能力の持ち主。
No. 2 エリカ・ベルジェ。45歳。『ミレニアム』編集長。上流階級の出。芸術家の夫あり。美貌と知性と行動力をあわせもつ華やかな才女。
No. 3 ソーニャ・ムーディング。39歳。ストックホルム県警の女性刑事。夫とこどもあり。男社会の中にあって冷静さと優れた直感を持つ。上司の信任も厚い。
No. 4 アニカ・ジャンニーニ。42歳。ミカエルの妹。女性の権利を専門とする弁護士。兄同様真摯に粘り強くリスベットを弁護する。 
No. 5 モニカ・フィグエローラ。公安警察所員。身長184cmの美女。男性顔負けの肉体をもつ。筋骨隆々、頭脳明晰。
No. 6 スサンヌ・リンデル。ミルトン・セキュリティー社員。元警察官。事故を未然に防ぐ為にセキュリティ会社に転職。熱い魂をもつ。
No. 7 ハリエット・ヴァンゲル。56歳。「ドラゴン・タトゥーの女」での主要人物。悲劇的な過去を乗り越えて女性実業家として大成。

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どの女性たちも印象深い活躍をみせるのだが、とりわけ、リスベット、エリカ、モニカの3人はミカエルの「親密な友人」でもあり、性的にもかなり奔放な超女傑である。が、こういった「女傑」が登場する影には、虐げられるばかりの運命のもと無惨に散って行く女性たちも数多く登場し、それゆえに動的な女性たちの活躍に溜飲が下がる思いがある。


スティーグ・ラーソンはパートナーのエヴァ・ガブリエルソンと共に執筆した、とあるので、こういった強い女性の登場は、エヴァ・ガブリエルソンの影響も多分にあるのだろうか???


他にも、ハッカー仲間のプレイグのキャラクタ設定もおもしろい。プレイグのキャラクタこそ、表舞台では全くの社会不適合者だが、行為としては「負(非合法)」でありながらも「正」のハッカーとしてネット社会では社交的で懐が深い統率力があるキャラクタになる、という両極端性を表していて、社会性とはいったいなんなのか?と問えるあたりも興味深い。


と、シリーズは第3部でいったんの終わりを迎えるが、まだ遺された謎もある。続きも残っているらしいが、著者のスティーグ・ラーソンは2004年にすでに他界している。シリーズは、基本的に推理小説であるが、長年出版業界に携わっていた著者スティーグ・ラーソンのデータ収集能力が結実され遺憾なく発揮された社会派小説でもある。今も存命ならこの期間にもまた別の種類の作品を発表していただろう、と思うと本当に、本当に残念でならない。





<追>
映画も公開されていますが、かなりハードな内容なので映像化となるとちょっと二の足を踏むかな。。R15+なんですもの。エロもグロもそれ相応に、ってところでしょう。。。。大画面では見れないっ。

そして、ミカエル役がダニエル・クレイグっていうのは、ちょっと違うかな。女にめっぽう弱いって感じがないんだもん。主人公ミカエルには多分にスティーグ・ラーソンが投影されているような。ルックスだけ見ると、ミカエルにぴったりだし(笑)。

と、アマゾネス診断するとしたら、どれかなあ。どなたも強烈すぎて該当しないかも。誰か診断作って欲しい(笑)。




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この記事へのコメント

nori
2012年02月18日 22:50
ドラゴン・タトゥーの女この前観てきましたよぉぉ。
言わずと知れた世界的大ベストセラーの「ミレニアム」3部作?
そうなんですかぁ~これまた知らなかったぁ~(笑
本読まないから~( ̄▽ ̄)ははっ
映画はR15って・・・いいのか?
あれは?高校生・・観ていいのか?
高校生カップル観に行ったら;;;;;;;(ノ・ω・))ひ~
昭和のおばちゃんは心配しちゃうよぉ~
続編ありそうな感じですねぇ観たいなぁ
2012年02月19日 08:24
noriさま>>
おう、もう見てきたんですね。ええ、怖くなかったですか(笑)そうそう、あれ3部作だから、あと2回あると思いますよ。???高校生には刺激強そうですよねえ。見に行ったはいいけど、げんなりして帰ってきそう(笑)。

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